MMT(現代貨幣理論)とは、中国や米国は既に実践して成果を出している
2020/03/07
MMT(Modern Monetary Theory)とは

国債発行に基づく政府支出がインフレ率に影響するので、『税収』ではなく『インフレ率』に基づいて財政支出を調整すべきだという新たな財政規律を主張する経済理論。
税金は財源ではなく、国債は資金調達手段ではない。
家計や企業が税金を支払うためには、あらかじめ通貨を保有している必要がある。
家計や企業は、なぜその通貨を手に入れることができた?
答え
政府があらかじめ通貨を使って支出していたから
「政府には支出の財源が必要」ではなく、先に政府が支出する必要がある。
政府支出を税収の基準にしてはならない理由
政府は赤字を垂れ流しても、民間にお金を回せば景気が良くなる。
政府が国債を発行すると家計の銀行預金が増える。
- 政府の赤字は民間の黒字
- 政府の黒字は民間の赤字
政府の借金を抑えるプライマリーバランス目標は国民が赤字となる。
プライマリーバランス目標 = 国民赤字化目標
財政支出
人々に所得をもたらすことで景気を刺激する。
金融緩和
人々に借金を負わせることで景気を刺激する。
国民の幸福基準
- 失業率
- 賃金
- 金利
- インフレ率
国民が幸福となる基準(インフレ率・失業率)で判断する必要がある。
日本円に価値がある理由(貨幣観:信用貨幣論)
国家が税をかけるから貨幣に信用が生まれる。
税を払う必要があるから、自国通貨を持ちたがる。
銀行預金の信用は日本札にいつでも交換できるから。
万年筆マネー
銀行が100万円預金を預かったら、その100万円を別の人に貸しているわけではない。
銀行の貸出とは、単に預金通帳の「お預かり金額」に数字を記帳するだけ。
民間銀行が現物貨幣が無くても、お金を発行させて企業や個人に貸し出しているという事実。
財政赤字や国債残高を気にするのは無意味
財務省の公式見解
政府は、自国通貨建ての借金で破綻することなど考えられない
破綻を恐れて、政府支出を過剰に抑制するデメリットの方が大きい。
MMTは、債務を無限に拡大せよ、とは全く言っていない。
過剰なインフレ(例えば3~4%程度)が「債務拡大の上限」だと明言している。
過剰なインフレ(例えば3~4%程度)が「債務拡大の上限」だと明言している。
完全雇用&最低賃金の実質的な保障
就労・賃金保証プログラム(JGP:Job Guarantee Program)
政府は「最後の雇い手」として、希望する人々全員に、一定以上の賃金水準で就業する機会を約束することができる。
「完全雇用と物価安定」を実現する経済安定装置。
ただ、日本では利権問題が大きい為、公共投資を増やすリスクは高い。
MMTのインフレの調整方法
インフレ率を2%~3%に収めるように国債発行額を調整する。
所得税、法人税の「累進性」を高く設定する。
「貨幣循環量調整」
- 循環する貨幣が多くなればインフレ
- 循環する貨幣が少なくなればデフレ
消費税を増税すれば循環する貨幣は減るのでデフレとなる。
(この証明をインフレを目指しているはずの日本が証明してしまった)
上限規律を超えた場合(インフレになりすぎた)
- 自動的に消費税を増税
下限規律を下回った場合(デフレになりすぎた)
- 自動的に消費税を減税
- 低所得者の減税を実施
MMTだからこそ明らかにされた「金利」の真実
国債の「新規」発行では金利高騰せず、むしろ下げる。
金利は、インフレや経済成長により資金需要が拡大してはじめて上がる。
ケルトン「財政赤字や政府債務の増加が金利上昇や財政破綻につながるわけではない、というMMTの主張を日本の事例が立証してくれた」
日本はGDPに対する債務比率が世界最高水準の「不健全さ」に達しているはずの政府が、赤字収支を続けながらも債務不履行に陥ることなく、しかも世界最低水準の資金調達コストを享受している。
MMTのよく聞かれる懸念点
インフレをコントロールできなくなる
増税でコントロール可能。
ハイパーインフレの事例
ジンバブエ
ムガベ政権が行った農地改革(白人農場を強制的に接収したが資金も技術もなかった為、活用できずに食料不足となった)で食料生産が崩壊。
物価上昇をもたらした。
こうした政治的・経済的な混乱によって適切な増税が行われず、それがハイパーインフレを助長した。
ベネズエラ
原油が輸出が9割の国。
ジンバブエと同様にインフレ時にインフレ政策(財政的に裏付けのない最低賃金引き上げや補助金の乱発)をした。
日本
第一次世界大戦後の日本のハイパーインフレ。
軍に対して民主的な統制が及ばないという当時の政治制度上の欠陥。
健全な民主主義の不在。
政府の徴税能力が失われるような社会的・政治的な大混乱の下での、戦争による生産能力の崩壊を典型として「ある種の供給制約」こそが、ハイパーインフレの原因。
ハイパーインフレ期における財政赤字を伴う通貨発行の増加は、むしろその結果。
現状、多くの先進国は巨額の財政赤字があるが、低すぎるインフレやデフレへの対応に苦慮している。
異常な状態でもない限り、民主主義国家がインフレを許容範囲に制御することは十分可能。
現在の日本がダメな理由
日本のGDPは20年間変動なし。
MMTの提言とは真逆の政策を20年以上続けている日本。
政府による緊縮財政(政府の支出が圧倒的に少ない)。
政権与党にインフレが嫌いな人が多く、本気でインフレを目指していない。
金融政策だけでは物価をコントロールできず、デフレは脱却できない。
金融政策よりも財政政策の方が効果が大きい。
日本が復活するのに必要なこと
財政支出の継続的拡大。
その裏付けはMMTの機能的財政論。
公的年金保険料や消費税については廃止または引き下げが検討されるべき。
中国や米国の経済成長がすごい理由
現在MMTを最も実践しているのは中国。
トランプは「MMTは社会主義の論理」だと言っているが、自分もやっている。
政府負債の伸び率(2007年から10年間の負債の伸び率)
- 日本:1.39倍
- 米国:2.23倍
- 中国:4.92倍
中国は政府負債が増えてもハイパーインフレになっていない。
1997年から20年間の年平均インフレ率
- 日本:0.1%
- 米国:2.2%
- 中国:1.9%
一人当たりGDP(米ドル)
|
1988年
|
2008年
|
2018年
|
|||
日本
|
2位
|
25,065.13
|
24位
|
39,453.49
|
26位
|
39,303.96
|
アメリカ
|
9位
|
21,376.00
|
15位
|
48,283.41
|
9位
|
62,868.92
|
中国
|
121位
|
371.02
|
112位
|
3,467.03
|
70位
|
9,580.24
|
日本は一人当たりGDPが1988年の2位から2018年の26位まで落ちる。
財政支出伸び率と経済成長率は比例している。
MMTはベーシックインカムに否定的
通貨の価値
通貨を取得するために何が必要であるかによって決定される。
通貨を「無料」で提供する政策は、「租税が貨幣を動かす」というメカニズムを無効にして通貨の価値を激しく低下させる。
労働者の減少は同時に労働所得からの税収入が減る。
ビットコインは貨幣ではない
適性価格はゼロ
- 貨幣としての価値を何らかの形で保証する「債務者」が存在しない(日本円は税金という信用がある)
- 税金などの国家に対する支払いに使用できない
ビットコインが高値で取引されているのは、人々が「他人がもっと高い価格で買ってくれる」と思って一種のババ抜きゲームをしている。
17世紀オランダでチューリップの球根が一時は家が一軒建つほどの高値で取引されたものの、結局は大暴落として終わった歴史的なバブルがある。
人の欲望がなくならない限り歴史は繰り返す。
MMTは使えるお金は増えるが、結局はその使い方次第
国民が幸福になるようにそのお金をうまく使えれば効果はあるが、うまく使えなかった場合はマイナス効果がある。
MMTに想定していなかった問題が発覚した場合、中国や米国が先にその問題に対応することになるので、その対応を見ればよい。
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