投資信託の特徴、注意点、手数料、投資先の選び方、解約方法を解説
2020/01/17
投資信託とは
専門家が目利きをして、投資信託という器に株式や債券などを入れる詰め合わせ商品。
投資信託の特徴
- 少額から投資可能
- 手軽に分散投資
- 専門家が運用を代行
- 個人では投資しにくい地域・資産に投資可能
- 金融資産として透明性が高い
- 販売会社、運用会社、信託銀行のいずれかが破たんしても資産は守られる
投資信託の注意点
- 手数料がかかる
- 元本保証ではない
- 複雑な仕組みの商品もある
-
株のように指値注文はできない
-
購入するとき「いくらで買えるか」わからない
-
解約するとき「いくらで解約できるか」わからない
中身は「どこ」の「何に」投資するかで決まる
投資する地域
- 国内
- 海外
- 内外(国内と海外の両方)
何に投資する?
- 株式
- 債券
- 不動産
- その他
- 資産複合
「つくる」「売る」「管理する」という3つの会社
つくる:委託会社(運用会社)
投資信託という商品を作って運用する。
売る:販売会社
投資家は投資信託を販売会社から買う。
販売会社は投信の購入・解約、投資家の口座管理をする。
販売会社
- 証券会社
- 銀行の窓口
- ネット証券
- ネット銀行
管理する:受託会社(信託銀行)
運用会社からの指示に従って、株式や債券などの売り買いや管理を行う。
投資家から集めた信託財産を自社の財産とは区別して保管・管理している。
運用会社、販売会社、受託会社のいずれかが破たんしても資産は守られる
運用会社が破たんした場合
別の会社に引き継ぐか繰上償還。
販売会社が破たんした場合
別の会社へ移換。
受託会社が破たんした場合
解約か別の会社へ移管。
※ 預金は銀行ごとに1000万円+利息までは全額保護される。
※ 利息のつかない決済性預金などは全額保護される。
投資信託の儲けと損
投資リターンは売却益(売却損)と分配金の両方を合わせた「トータルリターン」で見る必要がある。
売却益(キャピタルゲイン)
投信を買った時よりも価格が値上がりしていれば、解約した時に儲かる。
売却損(キャピタルロス)
投信を買った時よりも価格が値下がりしていれば、解約した時に損をする。
分配金(インカムゲイン)
投信の決算が行われるときに投資家に支払うしくみ。
分配金は投信の資産から支払われるので分配金がでると投信の資産が減り、基準価格もその分下落する。
その日の基準価格の決め方
投資信託の値段は1日1回だけ変わる。
投資している会社のそれぞれの終値と投信が持っている株数を集計する。
純資産総額
保有する会社の株数と終値を集計し、株の配当や債券の利息などを加えた資産総額から、運用にかかる手数料などを差し引く。
この純資産総額を受益権総口数で割ったものが、その日の基準価格となる。
リスクとリターン
どのくらいの価格が変動するかを示す「リスク(標準偏差)」。
この数値が高いほど価格が変動するときの幅が大きくなる。
投資したときの損益は95%の確率で
「リターン±リスク×2倍」
の範囲におさまると言われている。
投資先はリターンだけでなく、リスク(標準偏差)が低いものを選ぶ。
投資信託が価格変動する原因とは
価格変動リスク
株式、債券、不動産などのリスク資産は需要と供給によって価格が変動する。
- 需要が高くなると価格が上がり
- 供給が増えると価格が下がる
金利変動リスク
債券は金利の影響を受ける。
- 金利が上がると債券の価格は下がり
- 金利が下がると債券の価格は上がる
為替変動リスク
海外の株式や債券などに投資する投信の場合、投資先の通貨を通して投資を行うため、為替が変動すると影響を受ける。
為替ヘッジをしていると、為替変動リスクはなくなるが、その分コストがかかる。
突発的に起こり、影響が大きい4つのリスク
信用リスク
国の財政や会社の経営が悪化し、価格が急落したり、ゼロになってしまったり、債券の場合には利子の支払いが滞ったり、元本を返せなくなったりする可能性。
カントリーリスク
投資する国の政治や社会、経済、自然などの環境が変わることで、価格が大きく変動するリスク。
流動性リスク
市場での取引量が少ないため、株式や債券を希望した価格で売却できなかったり、取引ができなかったりする可能性のこと。
派生商品(デリバティブ)リスク
派生商品の投信はこうした取引を活用して高い収益を狙いますが、その分大きな値下がりリスクもある。
派生商品の例:先物取引やオプション取引
手数料
内訳は「運用報告書」の「1万口当たりの費用明細」を確認。
「つみたてNISA」で購入している投信については、年に1回、実質コストが通知される。
購入時手数料
投信を購入するときに販売会社に対して支払う手数料。
「つみたてNISA」対象商品はすべて無料(ノーロード)。
銀行の窓口では購入時手数料3%等の手数料の高い商品を優先的におススメしてきます。
悲しいことに現状の銀行は顧客の利益より自社の利益を優先している所が多いです。
運用管理費用(信託報酬)
投信を保有している間、ずっと投信の資産から間接的に支払われる。
運用会社、販売会社、信託銀行の3者に支払われる。
年率〇%という率が定められていて、毎日資産から差し引かれる。
運用管理費用の差がわずかでも長期的には大きな差となる。
投資信託の手数料の中で一番大きなコストなので安いものを選ぼう。
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1年
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10年
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20年
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A投信(年0.2%)
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99.80
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98.01
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96.07
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B投信(年1.0%)
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99.00
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90.43
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81.79
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売買委託手数料
株式や債券などを売買するときにかかる手数料。
監査費用
投資信託は原則決算ごとに、監査法人などから監査を受ける必要があり、その監査に要する費用。
信託財産留保額
投資信託を購入または解約する際、手数料とは別に徴収される費用。
販売会社が受け取るのではなく信託財産に留保される。
投資信託によって差し引かれるものと差し引かれないものがある。
お金を増やすための3つの戦略
3つを組み合わせることで負けにくい運用が可能。
分散
1つの株や1つの国に投資するとリスクが大きくなります。
分散することでリターンをあまり下げずにリスクを減らせます。
予想は当たらないということを前提に「世界の株をまるごと持つ」という発想が必要。
長期
株は年単位では負けることはあってもその年数が長ければ長いほど負ける確率は下がる。
短期的な値動きに一喜一憂しない。
低コスト
支払うコストの差がわずかでも長期的には大きな差となります。
インデックスファンドの選び方
運用スタイルは「パッシブ」と「アクティブ」の2つがある
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パッシブ運用(インデックス投資)
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アクティブ運用
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入っている銘柄
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目標とする指数とほぼ同じ銘柄が入っている
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運用会社が一定の投資哲学・プロセスにもとづいて「ピックアップ」する
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運用の狙い
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目標とする指数と同じように動くことをめざす
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指数にとらわれない運用を目指す
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手数料
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低い
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高め
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わかりやすさ
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わかりやすい
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わかりにくい
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代替え商品
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すぐ見つかる
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なかなか見つからない
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手数料の安さ
同じ指数に連動する投信の中で、運用管理費用(信託報酬)が相対的に低く、購入時手数料なし(ノーロード)の商品を選ぶ。
運用管理費用の引き下げ実績のある商品がベター。
継続して運用してくれそうか
純資産総額の規模と推移を確認する。
規模
規模(純資産総額)が小さいと実質コストが高くなりやすい。さらに当初決まっていた運用期間よりも前に繰上償還される可能性がある。
償還とは
投資信託の運用期間が終わり、信託財産の清算を行い、投資家に対して投資口数に応じた償還金を返還すること。
推移
純資産総額が安定的に増えているものから選ぶ。
投信の成績はなるべく長い期間をみる。
投信の成績はなるべく長い期間をみる。
目標とする指数とぴったりと連動しているか
ベンチマークからの乖離が少ない方が望ましい。
購入前に交付目論見書、月次レポート、交付運用報告書を確認
目論見書とは
運用会社が作成し、自社で運用する投信の中身を説明した「取扱説明書」のようなもの。
商品分類と属性区分を確認。
月次レポート
月に1回など定期的に、直近の運用状況についてまとめたレポート
どのような会社にどのような比率で投資しているのかがわかる。
運用報告書
半年か1年に1回、投信の保有者に対して、投信の運用状況を報告するための文書。
その期の運用成績や投資家が負担した手数料などがわかる。
保有していなくても『対象の投資信託の名前 運用報告書』で検索すると確認できる投資信託が多い。
手数料
交付目論見書の「ファンドの費用」
購入時手数料や運用管理費用(信託報酬)が記載されている。
運用報告書の1万口当たりの費用明細
- 信託報酬
- 売買委託手数料
- 有価証券取引税
- その他費用
規模が小さい場合、売買手数料や保管費用の比率が高くなり実質コストが高くなりやすい。
投資評価会社モーニングスターでも「実際の経費率」が載っている。
継続性
交付目論見書で「信託期間」と「繰上償還」を確認。
信託期間
「無期限」は満期がない。
日付が書いてあるものも延期される場合がある。
繰上償還
一定の受益権総口数を下回ると、運用が途中でストップされる可能性がある。
繰上償還されてもそのときの時価をもとに現金化されるだけですが、運用計画が崩れます。
月次レポートで純資産総額が安定的に推移しているか確認する。
ベンチマークとのかい離
交付目論見書で下記を確認
- ベンチマーク(目標とする指数)は何か
- 指数は配当込みか
月次レポートで目標とするベンチマークとの差を確認。
バランス型投信とは
ひとつの資産だけではなく、株式と債券、株式と債券とREITなど、複数の資産を組み合わせて運用する投資信託のこと。
バランス型投信のメリット
株式だけの投信よりリスクが低くなり、値動きが小さくできる。
自分で投信を組み合わせる場合、数年に1度リバランスが必要だが、バランス型は運用会社がやってくれる。
ターゲットイヤー型
将来のある時点をめざして買う株式などの比率を一定ルールに沿って自動的に引き下げていく商品。
例:時間の経過とともに、株式中心から債券中心へ少しずつ資産配分を変えて運用する。企業型DCやiDeCoで採用されるケースが多い。
例:時間の経過とともに、株式中心から債券中心へ少しずつ資産配分を変えて運用する。企業型DCやiDeCoで採用されるケースが多い。
バランス型投信のデメリット
手数料が高くなる。
アクティブファンドの選び方
- 確固たる投資哲学に基づいた運用スタイルを持っているか
- 投資対象の選定プロセスが明確に示されているか
- 過去の運用実績が運用方針と整合性がとれているか
- 過去の運用実績が目標とする指数より長期間上回っているか
運用の安定度をみる「シャープレシオ」
そのリターンを得るためにどのくらいのリスクを取っているかをはかる指標。
リターンから元本保証された商品から得られる利回りを差し引いた数値をリスクで割って計算。
数値が大きいほうが「運用効率がいい」といわれている。
シャープレシオの注意点
- 同じ分類、同じカテゴリーの投信で比較する必要がある
- リターンがマイナスのときは運用効率が悪い投信の数値が高くなる
目標とする指数(ベンチマーク)に勝てるアクティブファンドは少数派
2017年までの10年間
目標とする指数(ベンチマーク)に勝っているアクティブファンドの比率
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44.04%
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日本の大型株ファンド
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36.48%
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日本の中小型株ファンド
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12%
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米国株ファンド
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4.81%
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グローバル株式ファンド
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4.55%
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新興国株式ファンド
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初心者はインデックスファンドを選ぶのが無難。
投信を買うならiDeCoやつみたてNISAがおススメ
非課税口座を優先
課税口座の場合、投信を解約したときに利益がある場合、約20%の税金が差し引かれる。
金融機関や投資対象を探すなら、金融庁の厳しい条件を突破した『つみたてNISA』対象ファンドから選ぶと大きな失敗は減る。
どうしても投資先に迷った場合は
下記のランキングから選ぶのが無難。
投資信託の買い方
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スポット買い
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積み立て
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買い方
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自分で購入する金額・購入タイミングを決める
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毎月など決まったタイミングで一定額を買う
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メリット
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好きなときに、買いたい金額で購入できる
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手間がかからず、生活の中に取り入れやすい
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下がったときでも投資が継続しやすい
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デメリット
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買うタイミングを迷う
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下がり続けると損がふくらむことも
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手間がかかる
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面白味はない
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初心者は積み立てで放置がおススメ。
確認は1年に1回ぐらいで十分。
投信の解約方法
一定額ずつ解約していく(定額引き出し)
下落時に多くの口数を解約してしまうので、リターンは悪くなる。
自動的に解約するサービスもある。
一定の比率で引き出していく(定率引き出し)
運用残高に対して一定の比率を引き出していく方法。
下落時に少ない金額しか引き出せないが、リターンは良くなる。
一番おススメの受け取り方です。
最近、自動的に定率で解約するサービスがでました。
今後は同様のサービスが増えていくと予想されます。
一定の口数を引き出していく
解約する時の価格によって受取額が変動する。
▼参考書籍
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